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仕方なく花衣は、今日美里から貰った、映画の原作本を手に取った。
幸いにして読書好きの彼女は、すでにその原作を高校生の時に読んでいた。
日本とイタリアの血が流れるヒロインが、祖父の故郷であるイタリアの小さな農村を旅行で訪れ、そこで素敵なイタリア人男性と出会う。日本で辛い失恋を経験した彼女は、イタリアの美しい自然とイタリア人男性の優しさに癒やされながらも、結局日本へ帰ることを決意する。帰国した彼女は、「やっぱりあなたを愛している」と言うために別れた恋人に会いに行くが、恋人は重い病に冒され余命わずかの状態にあった。彼女は懸命に恋人の看護をし、彼を看取ったあとに、またイタリアのかの地を訪れた。だが彼女を癒やしてくれた村はなく、優しくしてくれたイタリア人男性もおらず、そこには朽ちた聖人の像だけが残っていた。
そんなファンタジー色の強いロマンチックな恋愛小説だが、多感な高校時代にこの本を読んだ花衣はいたく感動し、翌日は泣いて腫れぼったくなった目のまま学校で行ったことを覚えている。
おそらく映画の方も、映像美を意識した幻想的で情緒的な作品になるだろうと思われた。
ゆえにヒロインの衣装も、あまり時代を考慮せずに美しい風景に映えるものにすべきだろう。
「…………」
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