迎え酒

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 長々と講釈を垂れていては話が進まないのでこれくらいに止めることにするが、而して実態は、その通り、集会なのだ。同じ趣味、同じ潜在能力を持ちそれを発揮し得る――否、発揮し得た人間が集まっているものだ。  しかし、それ以前に、《黄雲》という言葉の意味を知っていなければ、この黄雲会が何を紐帯にして集まる会合なのかは、果たして分からないだろう。 《黄雲》の意味内容としては、文字通りに、黄色い雲という意味も持つが、秋の広い水田にたわわに実る稲穂を指していうこともあるのが、この言葉である。そしてさらに、実はもう一つ、意味を持っているのだ。  成人の嗜みのひとつ、酒である。  それを聞けば、もう《黄雲会》が何のことか、大体は掌握可能であるだろう。そして、感じ取ことができるであろう。  ――黄雲会とは、一同に会して、酒の宴を繰りひろげる、そんな愉しげな、まさしく幸運の会する場所のように。一般的思考、常人思考の範疇であれば、そう考えて差し支えない。  斯く言う俺も、最初はそう思っていた。例えて言うなら、会社、大学のサークル、その他、打ち上げ、忘年会、新年会、歓送迎会といったような、どこか間の抜けた、穏やかでありながらやや殺伐としたような酒宴を想像していた。
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