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『我々も入ろう』
そう言って、札幌駅の階段を駆け上がるように颯爽とステップを使わずに飛び込みました。私は無様に転びたくなかったので一段一段踏みしめるように登りました。
車中は天国のようでした。
ひと言で表現すれば、大宴会場でした。
電車特有の椅子の姿はなく、その代わりにテーブルが設けられておりその上には食事やら酒やらが所狭しと並べられ、立食パーティーの会場のように明るい雰囲気でした。天井が高く感じましたが、恐らく2階建て車両の2階部分の床を取り払ったのでしょう。奥がかなり広くなっていたのは、4両目から6両目にも繋がっているからでしょう。
私が神酒村氏からウィスキーのオンザロックを受け取るのと同じタイミングで、電車はゆるりと滑り出しました。何処へ行くのかは、このときの私にはどうでもよいことでした。皆が和気藹々と酒席に興じるときに余計な思考は無用なのです。
神酒村氏に連れられて、私は後ろの車両に向かいました。
4両目と思しき区画の一部には、膨大な量の酒がストックされていました。恐らく、今まで巡り歩いてきた店舗のように、この道中で尽きてしまうことはなさそうでした。
5両目のあたりにはワイン樽が五つありました。しかしそのうちの一つは既になくなっているようで、『SOLD OUT』の張り紙がありました。私も一杯頂くことにしました。樽に書かれていた種別表示には〈エシェゾー〉とあり、15年物だそうです。ロマネ・コンティの中でも軽い飲み口と評判のものだけあって、赤特有の渋みも少なく非常に美味しかったです。
今回は車両増結が成されているらしく、6両目の奥にも人の気配がありました。
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