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7両目に足を踏み入れると、そこにはバーカウンター式の店舗がありまして、既に二つのグループが席を陣取っておりました。ひとつは30代前半か20代後半と見える男女混合で、もう一つは体育会系大学生風の男子のグループでした。流石に私と神酒村氏では飛び入りしにくい雰囲気でありましたので、私たちは次の車両へと歩を進めました。
8両目も、同様にバーカウンターがあり、ここでは幸運なことに『クリスタル・アイズ』で一緒になったメンバーだけが座っていました。私にもなじみの人間がいるから、と考えてくれたようで彼はここにしようと言ってくれました。私は彼らの左隣に腰を下ろし、神酒村氏は私の左側に座りました。クラシック音楽が、至極小さなボリュームで流れていました。
ふたりの酒豪が参加したことで、またしても在庫切れ発生したらと少なからず懸念していたのですが、今度は全くその兆候が現れません。様相はかの有名な《わんこそば》に酷似していました。きゅっと飲み干すとすぐさまもう一杯と差し出されるのです。オートメーションかと思ってしまうほどに間隙も設けず配給されてくるのに、私は感激してしまいました。しかし、感動といっても出てくるのは涙ではなく、笑いとアルコール分解能でしたが。
30分ほど飲んだでしょうか。休憩程度に、と焼酎ハイボールの入ったグラスを空にしたところでした。
『やあやあ、皆さん。ご機嫌麗しく』
何の前触れもなく、車内放送から音声が流れてきました。やたらと鼻に掛けている感じはあるものの、彼の老成した低い声はバーカウンターにはぴったりでした。
『モリタさんのお出ましだ』
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