酒匂氏の話: 大会

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『彼とは今日知り合ったのですが、素晴らしいですよ。大ジョッキの《スクリュードライバー・改》の一気飲みに成功しましたから。ここに来る前にも梯子してきたのにその状態ですし』  名前の交換を終え、神酒村氏がそう言って私を紹介すると、宴多(もりた)氏は(神酒村氏のときと同様に名刺を頂いたときに、文字を拝見しました)大きく目を見開いて、 『なんと! それは素晴らしい! 神酒村君、君は素晴らしい人材を見つけてくれたんだねぇ』 『それでですね。私が見たところ、彼なら私と真剣勝負ができるように思うのです。どうです? 特別枠のような形式で、彼を闘酒に参加させてみるのは』  面白くなると思いますよ、と笑う神酒村氏を横に、腕組みをしながら悩んでいるようでした。しかし、2秒もかからないうちに結論が出たようでした。 『そうだな。ここのところ君ばかり勝っていて、何とか面白い勝負にならないかと思っていたところだからな。神酒村君のお墨付きなら、皆も文句は言うまい。……それで。君のほうは、大丈夫なのかな?』  いきなり話を振られて少し焦りましたが、私はひとつ咳払いをして参加の意志を告げました。 『そうか。よし、それでは、君を五人目の挑戦者として皆に紹介するとしようか』  そう言って私の肩を二つ叩くと、年齢不詳の好々爺は30代のような足取りで、車内放送を管轄しているらしい運転席の方へと歩いていきました。
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