酒匂氏の話: 大会

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 トイレ休憩を挟み、セカンドステージは黒ビールでした。  ルールは時間制限式。5分以内に、特大ジョッキで何杯飲めるか、というものでした。  この戦いはかなりの接戦に縺れ込み、私と神酒村氏、宴多氏の3人で、30ccの差でした。ここでは私は、残念ながら神酒村氏に敗れてしまい、2位でした。  最終戦になったサードステージは、なんと禁断のサドンデスでした。あまりに私と神酒村氏、さらには宴多氏が競り合っているから、という理由で、他の黄雲会メンバーから提案が出たのだそうでした。  しかも、標的は〈スクリュードライバー・改〉改め、〈スクリュードライバー・壊〉。半紙に達筆な筆跡で書かれたものを見せ付けられたときは、わくわくして仕方がありませんでした。  製法は今でもわかっておりません。少なくとも、この戦い専用に作り出されたとしか思えないものでした。先ほどと同様に特大ジョッキに並々と注ぎ込まれるのを見ていて、一体私は大丈夫なのだろうかと思いました。しかしここまで来ると、私の味覚の胃は、すべての酒を美酒と感じてしまうのです。水を浴びるように飲みました。面白いことに、飲めば飲むほど、この酒が美味しいと思えるのです。そして、やはり先の二ステージと同じで、周りの景色も見えず、回りの音も聞こえず、解かるのは酒の味と、ジョッキの重さだけでした。  もう何杯飲んだか解からないほどでした。横でかすかに、ドサリと崩れ落ちる音を聞きました。しかし、それに構ってなど居られません。飲みます。また、ドサリと音が聞こえました。それでも、私の腕はジョッキを支え続けます。飲み干せば、また次のジョッキが差し出されます。『もう無理だ』という声が聞こえた気がしました。それでも、新しく来たジョッキを口に運びます。それを飲み干すと同時でした。  急にジョッキを持った手とは反対側の手を、高く掲げられました。その瞬間、車両前側の連絡扉が勢いよく開かれ、大勢の人間が私を取り囲みました。そのまま彼らに横抱きにされると、気付けばパーティー会場の車両で胴上げをされていました。
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