酒匂氏の話: 宴も酣

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 私は、脳の中に自分が取り込まれて行くような、螺旋階段を一気に下っていくような感覚に襲われました。あまりに急激な変化に身体も頭もついていけなくなりました。グルグルと回り落ちていく意識。  気を失いそうになったとき、下に地面のようなものが見えたのです。恐らくあれは本当の地面ではなかったと思います。ですが、私の意識の中の地面であったことには間違いありませんでした。  気付けば私は、蛍光灯の灯る明るいコンコースに立っていました。私が呆然と立ちすくんでいる側を、小さめなカバンをもったサラリーマン風の男や、少々遊んでいそうな若者が走りすぎていきました。  そして、ほぼ間隙も無く『23時51分発車、手稲方面小樽行き普通列車をご利用のお客様は3番線をご利用ください』という機械的な女性の連絡音声が耳に入ってきました。その声で我に返った私は、3番ホームへのエスカレーターを駆け上がって、普通車両に飛び乗りました。
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