こちらの宴も、酣

3/8

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
「夢ではない。断じて。これだけは言い切れるんだ、間違いなく」  何故だ。この話について、俺にはほとんど信憑性が感じられない。 「証拠のようなものがあるって言うんですか?」 「ある」  今度はこちらが目を見開く番だった。 「話の途中で、名刺の件があったじゃないか。神酒村さんと宴多さんから貰った、って言っただろう」  言いながら酒匂氏は、自分の懐に左手を突っ込んだ。 「……これが、そのときの名刺だ」  差し出されたのは、標準サイズで標準的な西洋紙で作られた、何の変哲も無い名刺だった。名前の他にも、ご丁寧に、《黄雲会》の文字とロゴが記されていた。雪の結晶を象ったと見えるロゴはエンボス加工のようなものが施されているという、中々に手の込んだものだった。 「貰ったときはただ文字だけが書いてあったんだが、手稲の自宅に着いてから出してみたらこうなっていたんだよ。最初触ったときはツルツルだったからね。あの電車の側面にも、同じマークが付いていたよ」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加