こちらの宴も、酣

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「じゃあ、君は、君自身が今此処でこうして私と話している、この事実を夢ではない、現実であると証明することはできるかね?」  唐突に難解なこと訊かれ、俺は少し戸惑った。  そして、俺はステレオタイプも甚だしく、自分の頬を抓った。やはり痛い。 「そう来るんじゃないかと思っていた」  くすくすと笑う。静かな笑い方は、物腰の穏やかそうな彼の風貌によく似合う。 「でもな。夢の中の君は、夢の中でしっかり痛みを感じているんじゃないか。私はそう思う。ただし、物理的なものだけではない。精神的な、心の痛みもある。……ほら、あるじゃないか。夢の中で悲しいことがあったときに、目が覚めたら泣いていたって話。ああいうのが、夢の中で体験した痛みの一つじゃないのかね」
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