第一話

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「何だ同族か。何だお前のその格好は。こんなところで何をしている」 「私か? 私は見ての通り、旅の詩人だ」 「詩人だと?」  荒々しい兵士達の嘲り混じりの声に肩を竦めたのか、この『詩人』と称したリザードマンの肩の上で、丸で荷物の様にくるまれた娘の体が微かに揺れる。 「何かあったのか。この山は平和だったはずだが」 「奴隷が逃げ出してな」 「奴隷?」 「ドリアードの娘だ。この辺りに逃げ込んだはずなんだが」 「全く持って知らんな。私は今から下山するところだ」  『詩人』が慇懃無礼に答え、付け加えてやる。 「だが、少し先に洞窟があった。あちらの滝の近くだ。そこを探せばいるかも知れない」  兵士達がそして娘をくるんだマントを軽々と背負ったまま 「お勤めご苦労」  彼らの横を堂々と通り過ぎて行こうとする。 「待て」 「何だ?」 「随分と大きい荷物だが」 「新鮮な鹿肉だ。山の狩人に頼んで皮を剥いだ後だからな。布にくるまねば傷む。何でも麓の城主は気難しい食通らしい。宴に参上するついでに、詩人として取り立てて貰おうと思っている。先を急いでも良いだろうか? 折角の袖の下が腐っては話にならん」  彼を呼び止めた兵士達が笑い出した。 「せいぜい頑張るんだな。詩人」 「そちらこそ」     
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