人生履歴書

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「へえ、じゃあそっちに君は?」  男性は僕の方を見た。 「僕はちょっと、悩んでしまいました。本当のことを選ぶべきなのかなって」 「どういうこと?」  男性が訊いた。 「いえ、ほらだって、就職試験だから誰だって自分をよく見てもらいたいって思うじゃないですか。だからアンケートひとつでも、自分のことを良く見せたいって思って・・・」  僕はぎこちなく答えた。 「それはそうですね。でも、アンケートだけでは、その人のことすべて理解できるわけではないですから、別に深く考えなくていいと思いますよ」  女性は失礼しますと言って席を立つと部屋を出た。 「気の強そうな人だね。彼女があのアンケートどんなふうに答えたのか気になるなあ」  男性は楽しそうに言った。 「やっぱり、正直に答えたんじゃないんですか」 「さあ、どうだろう。人間誰だって嘘の一つや二つ、平気でつくからね」  男性と目線が合って、僕はゾクリと寒気を感じた。
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