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『もしもし、聞こえていますか?』
「はあ!?」
僕は不意に聞こえたマイクの声に八つ当たりした。
『まあまあ落ち着いてください。そのまま扉と反対側の壁を見てください』
僕は勢いよく振り返る。そこは白い壁だったが急に透明なガラスに変わり、その向こうにはさっきまで一緒にいた男性がいた。
『どうも、さっきぶり』
男性はにこやかに話しかけてきた。
「あんた、さっきの――!」
『苛立たせてしまって申し訳ない。最終面接の一環として君が嘘をついていないか試させてもらった』
「嘘って――」
『さっきのアンケートのことだ。君は30問目のところで手を止めた。30問目の質問、覚えていますか?』
30問目の質問を思い出す。
「『あなたは怒りっぽいですか』ですよね。それと何の関係があるんです?」
『わが社は個人情報を取り扱う会社だ。平気で嘘をつくような人だと職務上困ることがある。だから先ほど、もうひとりの女性にも別のシチュエーションで嘘をついていないか試させてもらった。あの女性は非常に嘘だらけで、もうお帰りいただいている。まったく、学歴や友人関係、ほとんどが嘘だらけだった。それに対して君は実に正直で素晴らしい』
男性は手を叩いて嬉しそうに言った。僕は訳が分からず固まっていた。
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