コスモスの約束

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美咲さんはいつものように声を掛けて、夕飯の支度にとりかかった。ひかりちゃんは納得するまで縁側に座り、小さな庭の様子を見つめ、帰っていく。  ひかりちゃんがここに来るようになったのは、夏休み明けくらいの頃だった。彼女は突然やってきたのだ。まだあの頃は半そで姿だったのに、今は長袖を着ていた。そんな彼女は何を訊いても答えなかった。名前も学校も、友達も、家の場所も。迷子ではないことだけ、ぽそりと呟いたということだけがとても印象的で、それが美咲さんの記憶に残っている。  黄色と白のボーダーのTシャツにベージュのスカート。薄桃色のランドセルがまだ新しく、太陽の光を綺麗に反射させていた。胸に付けるエンジ色の名札には『二年一組、おうさわ ひかり』と書かれていた。  近所の子どもではない。美咲さんは、『おうさわさん』たる人物に心当たりが全くないのだ。昨年までの間毎年町会長をしていた美咲さんは、隣の町会くらいまでなら自信を持って答えられるにも係わらず。  いったいどこの子なんだろう  美咲さんは夕飯の大根を切りながら考えて、自分の過去を思い出していた。ひかりちゃんのことを考えると、思い出す男の子がいるのだ。       
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