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疲れた。
今日も今日とて、婚約者様との逢瀬を命じられてヘトヘトだ。救いはヤツが護衛も兼ねて同行してくれていることくらいか。
件の婚約者様が少しは面白い人間だったなら良かったのだが、模範的なお嬢様である人間にそのようなものを望むべくもなく、欠片も楽しさを感じなかった。邪険に扱うわけにもいかず、失礼がないように最新の注意を払いながらのお遊戯は極限まで精神を疲弊させた。合間合間を縫ってヤツと短い会話をするのが楽しくて付き合っているようなものだった。
「婚約者様はどうしてあんなにもつまらない人間なんだ?」
「どうしてそう、失礼な事を言えるのか疑問なんだけど」
「仕方ないだろう、真実だ」
ヤツははっきりと大きなため息をついた。
「間違えても本人にそんなこと言っちゃ駄目だからね?」
「言えるかそんなこと。お前だから言っているんだ」
そう言うとヤツは口を開きかけたが、何かを我慢したように口を閉ざした。
言いたいことがあるなら言えばいいのに。友達甲斐がない野郎だ。
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