日記という名の記憶

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 大目玉とはこういうことを言うのだろう。  ヤツを連れ帰ってからというもの、毎日がお小言に襲われる日々が続いている。  あれからボクは拗れるのが分かっていて、家族の中では最も温厚な祖母にヤツのことを話した。祖母はうんうんと頷くとテキパキとボクに指示を飛ばした。  まずは医者を呼び、到着までに寝床の用意をし、診断が終わるまでの間に食料やその他必要と思われるだろう資材を確保した。その全てが的確であり、長年主を支えてきた影の立役者たる風格を垣間見た。  そのおかげかヤツは持ち直したらしい。命に別状はないことを医者から伝えられたボクはほっと胸を撫でおろした。  まぁ、そこまでは良かったのだが、当然、その行為は一族に知れ渡ることとなる。  謎の人間を真夜中に屋敷に連れ込み、大騒ぎすればバレない筈がない。  適当に理由を見繕って説明したが、そこは弁の未熟なボク、一瞬で百戦錬磨の父達には嘘を看破されてしまった。祖母が庇ってくれなかったら、ヤツごと屋敷の外に蹴りだされていたかもしれない。  なんやかんや揉めつつも、事態はヤツが回復するまで保留と結論づけられた。  本日分のお小言を散々耳にいれたボクは、ヤツが眠る一室へと向かった。ノックをすると返事があったので入室すると、ヤツは椅子に座り、窓から外を眺めていた。 「もう大丈夫なのか?具合が優れないなら横になっていた方がいい」 「ありがとう、もう平気。大分元気になったよ」  どう見ても青白い顔をしてヤツは笑った。 「そんな病人まるだしの顔をして、どの口がいうか」 「死にはしないから大丈夫。それより、迷惑かけてごめん」 「迷惑だとは思っていない。ただ、心配はした」  ボクらはそれから会話はしなかったが、以前よりも仲良くなれたような気がしたので苦痛には感じなかった。
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