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問題が勃発した。
婚約者様の家から使いが来て、ヤツが見つかったのだ。
どうやら方々綿密に探索をしていたらしく、かなり険悪な雰囲気を漂わせていた。庶子とはいえ、召使いのような扱いをして、挙句に家から追い出した分際で、だ。
無償に腹がたったボクは奴等を強引に追い返そうとした。
「待って下さい。もう帰ります。お騒がせして申し訳ありませんでした」
予想外だった。
ヤツはてっきりこのままこの家で養生していくのだと、そう願っているのだと早とちりしていた。
ボクは呆然としたまま、彼等がこの家から去るのを眺めているしかなかった。
その姿が見えなくなると、涙が出てきた。
この感情は初めてで、ボクにはその正体が分からなかったが、祖母がこっそりと教えてくれた。
翌日、ボクは一人、家を出た。
祖母以外の誰もがボクを止めたが、決心は変わらなかった。
一路、婚約者邸へ。
ボクは…
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