神に至る本

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 少年は興味無さそうに一冊の本を手に取りました。それは、あそこの大きな木になる、宝石のような林檎と同じ色をしていました。 「じゃあ、この本は面白かったかい?」  少年が聞くと、おじさんは眼鏡の隙間からちらりとだけ本を見て、またすぐに本を積み始めました。 「ああ、その本ね。読んだとも。僕は世界中の本を読んだのだよ。世界中の本を読んだ僕から見て、その本は大した本ではなかったよ。ええと、確か……うん、大した本ではなかったよ。少年」  少年は、その本を高く掲げました。本がお日様を遮って、少年の顔に影を作りました。 「じゃあ、この本をもらっていいかい」  おじさんはちらりと見ることもしませんでした。 「ああ、構わないよ。僕は世界中の本を読んだのだよ。一冊くらい構わないさ」  少年は夜の星のような髪を揺らめかせて、本を抱えて去っていきました。 ◇  おじさんはうんと高く、うんと高く本を積みました。空の高いところは風が強く、おじさんは飛ばされてしまいそうでした。それでも、どんどんと積んでいくと、とうとう神様がお見えになりました。  しかし、あと少し届きません。本はもうありませんでした。  おじさんは大声を上げました。     
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