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大切なあなたに贈る愛の言葉
誕生日プレゼントだと言われて父から渡された一冊の本。それはタイトルも装丁もないただただ真っ白な本だった。
訝しげに受け取ったあと「ありがとう」と一言だけ告げて私はリビングをあとにした。「月乃!」と、何か言いたげに父が呼びかけるのが聞こえたけれど、一秒でも早くその空間から逃げ出したかった私は、聞こえないふりをして扉を閉めた。居心地がいいふうを装った場所。父とあの人と、そしてその二人の子どもの場所。そこには私の居場所なんてなかった。自分の家のはずなのにまるで他人の家のようで、私は唯一の自分だけの空間である自室へと逃げ込んだ。
ベッドの上にその本を投げるようにして置くと、近くにあった枕を押しつぶすようにその上に置いた。何度も何度も叩きつけるように。枕の中綿が飛び出て羽が部屋に舞っているのに気付くまで、私は一心に叩き続けた。
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