大切なあなたに贈る愛の言葉

2/15
前へ
/15ページ
次へ
 今日は私の18回目の誕生日だ。そして、私の本当の母の18回目の命日。18年前の今日、私の本当の母は私の命と引き換えにこの世を去った。私を産むこと自体が無謀だと言われていたと教えてくれたのは、口の軽い母の妹だった。私なんか下ろせばいいとみんなが言ったのだとそう教えてくれたのは、噂好きで父のことが大好きな父の母――つまり私の祖母だった。みんなが私が生まれてこなければいいと思ったのだと、私より母の命の方が大事だったのだと口々にそう言った。何よりも、私を見るたびに母の面影を探す父が一番そう思っていたに違いない。  父は母のいない寂しさに耐え切れずに私が幼稚園に上がるころに再婚した。ロングヘアーだった母とは違うショートヘアーの、パッチリとした瞳の母とは正反対の切れ長の目をした背の高い女の人と。彼女は母を亡くした私のために尽くしてくれた。でも、腫れ物に触るような態度が鬱陶しくて気持ち悪くて嫌いだった。母を知っている人はみんな私を憎んだ。母を知らない人はみんな私を気の毒がった。私という人間を私として扱ってくれる人は誰もいなかった。  本当はきっと母の代わりに私が死ねばよかったんだ。私が生まれなかったらよかったんだ。何度も何度もそう思った。消えてしまいたいと、そう思ったことさえあった。でも、できなかった。カッターを手首に当てて一本の筋を引く。たったそれだけなのに、痛みに決心が揺らぐ。歩道橋の上から飛び降りようと下を覗き込んでも、意気地のなさがそれを阻む。誰にも求められていないんだから、死んでしまえばいいのに、それが母を奪った私の罪への償いのはずなのに、それすらやりきれないだなんて、情けない。 「ねえ、教えてよ」  そう問いかけても、誰も答えてくれないのに。 「どうして私を産んだの?」     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加