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御堂奏太は、今日も放課後に学校の図書室にいた。そろそろ、期末テストが近づいているからという事情はあるが、そこで自習をする気なんてさらさらない。テストなんて、一夜漬け上等の世界だと思っているから。しかし、一夜漬けをして報われたためしはない。それより、せっかく図書室まで来たのだから、本を借りるのがマナーじゃないのかなと、気分転換がてら、奏太は借りる本を探した。
奏太は、正直あまり本を読むことが好きではない。小さいころ、親の仕事の関係で外国に一年余り滞在していたことが影響しているのだと思う。帰国子女といえば聞こえはいいが、実際には小学校に入るかどうかの時期の外国育ちだから、外国の言葉に慣れ親しんだとはとても言えなかった。そして何より、日本語をしっかりと理解しない時期に外国に言ったことから、帰国後しばらくの間、小学校生活で国語の理解にやや難儀していたのだった。外国で日本の国語の問題を目にしたことがあったのだが、「チャイム」の意味が分からず、「ちゃいろ」の間違いだと本気で思っていたことは、今でもいい思い出だ。
三分後、奏太は一冊の本を手にしていた。タイトルは、『現代社会に生き続ける恐竜』。恐竜は絶滅したのではないことでも主張しているのだろうか。何ページ分か、中身を開く。恐竜のイラストで、よく皮膚の色は茶色やくすんだ緑色で描かれていることが多いが、必ずしもそうであるわけではない……。まず初めに、恐竜についての説明をしているのだろう。次に、奏太は本の後ろのポケットをのぞくと、これまでに何人もの借りた人がいたのだろう、図書カードに数名の学年・組・氏名が書かれていた。その中に、戸部君の名前もあった。 そっか、戸田君がこの本を借りていたのか。じゃあ、読んでハズレはなさそうだ。
戸田君は、物静かだけどしっかりとその存在感を発揮するムードメーカーだ。読書好きだと聞いている。彼も、恐竜が好きなのかな?
貸し出しカードに本の名前を書いて図書委員に手渡した時、ちょうど、夕方のチャイムが鳴っていた。
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