絵本の中の少女たち

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「驚いたな。こんなに可愛いらしい少女がこの世に二人もいるなんて」  この店の主である彼にそう声を掛けられたのは、いつもの様に二人並んでショーウインドウを覗き込んでいる時だった。  この世にこんなにも綺麗な男の人がいるなんてと、本当に驚いたのは私達の方だと思う。  その浮世離れした美貌にすっかりとやられてしまった私達姉妹は、この美しい絵本と店主に惹かれて、いつしか毎日のようにこの書店へと足を運ぶようになっていた。  当然のようにこの店主とも顔馴染みになった私達だったが、二人共この絵本にだけは決して触れさせては貰えなかった。 「ごめんね。これは一点ものの大事な本で、売り物じゃないんだ。でも、こうしてここに飾っておくと、君達みたいな可愛い子が寄って来てくれるんだよね」  女の子が寄って来るのは、それだけが目的じゃないと思うけど?  そんな事をよく二人でクスクスと笑い合いながら話していたのに。
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