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「実はこの本、果穂ちゃんには既に見せちゃってたんだ。でも一人だけってのはズルいでしょ? だから、君にも見せてあげる」
「え!? 果穂が、いつ?」
「君と珍しくケンカをしたとかで、酷く落ち込んで一人だけでここへ来た時かな」
それは丁度、果穂がいなくなった日だ。
確かにあの日、珍しく果穂と激しい言い争いをした挙げ句に、私はそのまま一人家へと帰ってしまった。
その日の内に謝ろうと、何度となく電話やメッセージを送り続けたのだけれど……結局、果穂と連絡を取る事は出来なかった。
そしてその日を境にして、果穂は私の前からぷっつりと姿を消した。
未だに私の事を怒っているの……?
何故だかケンカの内容すら思い出せない。
そんな自分が許せなくて、毎日毎日心の中で果穂に謝り続けて来たけれど――
あの日、もしかしてここで何かがあった……?
その謎が、この絵本にある気がしてならない。
私はゴクリと固唾をのむと、ぶるぶると震える手でその美しい装丁の表紙をゆっくりと開いていった。
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