絵本の中の少女たち

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「あ……あなたは……一体何なの? どうしてこんな事が」 「何って? これは僕のコレクションだよ。気に入った少女をこの中に集めて、永遠の美を保存する。彼女たちの最高に美しい瞬間を閉じ込めてあげるんだ。だって、人間はすぐに老いて醜くなるだろう? そんなの僕には耐えられない。知ってる? 悪魔は綺麗なものが大好きなんだよ」 「悪、魔……」  その言葉に、不思議と違和感はなかった。  確かに、彼の美しさは人間離れしていると言っても過言ではない。  けれどもまさか、そんなものが本当に実在するだなんて。 「この本の欠点はね、一月(ひとつき)に一人ずつしか取り込めないって所。君達はいつも二人でいたから、思いの外時間が掛かっちゃったね」 「まさか、あのケンカはあなたが仕向けたものだったの? 私達を引き離して、一人ずつ取り込む為に」  「さあ、どうだったかなぁ?」  キョトンと悪魔は(とぼ)けたように小首を傾げる。  少しも悪びれた様子のないその人懐こい笑顔にも、今はただ恐怖しか感じられない。 「この絵本の最後は、美しい双子の姉妹で締め括られるんだ。良かったね、大好きな絵本の中で、君達は有終の美を飾る事ができるんだよ」
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