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星の美しさに魅入っていた時か、それとも少女の存在に驚いた時か。二コラは戸惑いつつも足元の草地に横たわる一冊の本を取り上げた。
「散歩にまでその本、持ち歩いてるのかよ」
少女を差し置いて、少年の方がずんずん近づいてくる。
短めの吊りズボン、目深に被った三角帽から覗くクリクリとした瞳がちょっと怖い。
「お、お兄ちゃんたち近所の子? こんな時間に……あ、牛飼いか何かしてるの?」
確かいつも病院で出される牛乳は近くの牧場から仕入れていると看護師さんから聞いた事がある。
二人はそこの子で、家の仕事を手伝って早朝から牛の世話をしている兄妹かもしれない。
「ボクたちの事はどうでもいい。質問に答えろ」
「ゼロ。……もっと優しく」
背後から掛けられた少女の声に彼がビクッと肩を揺らす。
そして二コラの心臓も、その消え入るような可愛らしい声にドキリと跳ねた。
「や、優しいじゃないかこんなに! いつもより」
「そうだけど……」
それきり押し黙ってしまった少女に肩をすくめ、少年は二コラに向き直った。
「まあ聞くまでもないけどな。ボクたちはお前の事ならなんでも知ってる。名前も歳も、生まれつき心臓が弱くてそこの施設病院で育ったことも」
「ど、どうして? お兄ちゃんたちはいったい」
「しょうがないな、教えてやるよ」
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