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 彼がサッと手を頭上に挙げると、見る間に辺りに光が差した。途端に目の前に広がる見渡す限り薄紫に染まったツユヒメクサの花畑。 「朝……!? うわぁ……っ、なんてきれい。まるでワンダーランドだ」 「ワンダーランド? 寝ぼけてんじゃねぇぞ」  一面の花畑には二コラと少年、そして黒いマントの少女だけ。 「ボクはゼロ。いまここにアルカナが支配する寓意(ぐうい)世界を下ろした」 「寓意世界……?」  草の匂い、温かく柔らかな風。いつも窓から見ていた風景だけれど、そこは確かにどこか夢物語のような現実味のない世界。 「あのなチビ。お前には13番目のカードが迫ってる。だからゲームをしに来た」 「ゲーム? 13番目って……、あっ!?」  次の瞬間、三人を取り囲むように薄紫の絨毯の上に巨大なカードのようなものがそびえ立った。  それぞれに0から21のローマ数字、穏やかな笑みを浮かべる女性や蛇が巻き付いた不気味な歯車など様々な絵柄が施されている。 「なにこれ。トランプじゃないよね」 「これはタロットカード。でも知らなくていい、知る必要もない」  二コラは眉をひそめて自分たちを取り囲むカードをぐるりと見回した。その中でふと目に留まったのは、真後ろにあった骸骨の絵柄。 (あ……これ)  そこに書かれたローマ数字はXIII(13)、カードという枠の中から黒いフードを被った骸骨が二コラに向かって手を伸ばしている。
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