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「もしかしてこれが僕に迫ってるっていう……?」
「そう。大アルカナ13番目のカード、人の死を司る死神だ」
今にも掴みかかってきそうな威圧感を湛え、骸骨の暗い目の洞が二コラを見据える。
「……じゃあ僕、やっぱりもうすぐ死んじゃうんだね……」
死神のカードから目を離さずに彼は呟いた。
「そんな気がしてた。だってずっとベッドから起き上がれなかったのに、今日はなんだか身体が軽くて。歩いて病院の外に出られるなんて神さまがくれた最後の奇跡だったんだ」
次に二コラが視線を移したのは手に持っていた本。
「でもね、僕だって知ってるよ。普通の健康な子がどんな感じで学校行ったり友達と遊んだり……好きな子にドキドキしたりすること。この本が全部教えてくれたから」
ちょっとはにかんで、二コラが本のタイトル”ぼくとあのこの小さな恋”を指先でなぞる。
「本ってすごいよね。実際の僕は病院の中しか知らないのに、この本を読むと主人公と同じ体験ができる。元気に遊んだり失敗して怒られたり。ずっと好きだった幼なじみの女の子に最後に気持ちが通じた時は飛び上がりたいほど嬉しかったな」
「ふん。お前チビのくせにマセてんな」
「え。そ、そうかな……」
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