ミートソースナイパー

　やあ、僕はミートソース。
　ひき肉にセロリ、ニンジン玉ねぎ、たくさんのハーブをフレッシュなトマトソースでぐつぐつ七時間煮込んであるのさ。
　シェフご自慢のソースってやつだね。
　食べて幸せそうな顔になっている人を見るのが幸せ。
　シェフってやつはまあ、大抵こういうことを言う分けさ。

　……ははっ。
　何て甘っちょろい連中だろうね。
　全く反吐が出る。
　彼らはこのミートソースの事を何にも分かっちゃいない。
　美味しい笑顔？　幸せ？

　違うね。このミートソースの生き甲斐はそんな事じゃあ無い。
　全く違う。
　僕の生き甲斐、それは……。

　白い服に赤い染みをつける事だ。

　人呼んで「赤き狙撃手(スナイパー)」。
　真っ白い洋服という名のキャンバスに赤い弾丸で芸術的模様を描くんだ。
　それはとても残酷で、とても美しく、とても悲しく、とても楽しい。
　幸せと不幸せは表裏一体。
　そんな事を僕に教えてくれる。