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If you don't wish upon a star, your dream doesn't come true.
――斉藤杏子は、生きる辛さに耐えられなくなったから、死にます。
そう書き残してから死のうと思ったのに、書けそうなものがどこにも見つからない。
学校で使っているノートはどれも使い物にならない。水にふやけ、破り捨てられ、マジックで落書きされたから。
紙きれでもいい、なにか書けるものを、と引き出しを漁ると、奥に一冊の本がしまわれていた。
紺色と水色のグラデーションがかった夜空に、銀色の星が散らばった表紙は、買った記憶も使った記憶もない。
でも、そんなことはどうでもいい。わたしは一刻も早く死ななければ。
わたしは震える手でボールペンを手に取って、ページをめくった。やっぱり使われた形跡はなく、どのページもまっさらだ。
わたしが受けてきたいじめや、両親のしてきたことも、きちんと書かなければ。そうしないと、なぜわたしが死んだのか、誰にも伝わらない。
机の中に虫の死骸を入れられた。
給食に異物を混入された。
担任は、悲鳴をあげるわたしを、彼らと一緒になって笑った。
父は仕事ばかりで、たまに帰ってくればため息とともにわたしや母の至らなさを罵る。
母は「おまえが弱いからよ」とわたしを殴り、クラスの子は道で会えば挨拶してくれるいい子たちなのだから、いじめられるのはわたしが悪いのだと怒鳴った。
思い返せば、わたしの十二年間は、いったいなんだったんだろう。
わたしが死んで、あいつらに、なんの報いもないのは許せない。
自分の死を書くはずだったペン先が、あいつらへの殺意にまみれる。
死ね、死ね、死ね、殺す、殺す、殺す。
わたしが死ぬ前に、おまえらを、必ず殺してやる!
力任せに書いた文字は罫線からはみ出し、強い筆跡を残した。
死ねや殺すという文字とともに、両親と、わたしをいじめてきた奴らの名を書こうとして、わたしは手を止めた。
そうだ――この本は三年前、姉さんがくれたものだ。
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