七房とベランダの少女

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七房とベランダの少女

シャラリシャラリと、胸元で騒ぐ首飾りが鬱陶しい。  付き合って3年目の記念に、照れ臭そうに彼からプレゼントされたネックレスのことだ。先月には互いの両親にも挨拶を済ませて、まるで下り坂を転げ落ちるレモンのように、歪に曲がりくねりながらも、おそらくはこのままズルズル、結婚へと落ち着くのだろうなと思い始めた矢先だけに、少し複雑な気分にもなる。  首筋で存在感を主張する、銀の細いチェーンの間には、花や扇の形など、大小七つもの銀細工が連なっている。所有権(かいぬし)を主張する首輪かしらと冗談を言えば、顔を真っ赤にして怒らせた。 「これは沖縄人(ウチナー)の伝統的なお守りであって、大切な君を僕の代わりに守護して欲しいと願う、僕の我儘だ。決して婚約指輪の代わりに済まそうなんて物ではないよ」  結婚に向けて周囲から固めていく彼の手腕に皮肉を言ったつもりだったが、どうも誤解を生んだようだ。正直、この言葉には幻滅し、私の心にいくらかは燻っていたはずの、彼に対する情熱を一気に冷した。     
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