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「どうって言われてもなぁ。友人? それもちょっと違うかな……」
「一ノ瀬は俺と同じだと思うんだ」
「同じ?」
「あぁ。お前に弱みを握られてる」
三島は口元に笑みを浮かべた。俺はその小さな反応を、答えとして受け取ることにした。
「前に河内の話をしていた」
「……したね。確かに僕は、一ノ瀬くんが他人に知られたくないことを知っているよ」
俺は失踪しておよそ1年が経つ友人の名を思い出し、彼が一ノ瀬の弱みに関わっているのではないかと踏んだ。
「でも君の弱みがそうであるように、一ノ瀬くんにとってもそれは"知られたくないこと"だよ」
三島の試すような瞳に見つめられ、グッと息を呑む。三島は意外と冷淡な男だ。自分が興味を持ったものにはある程度の敬意を払うが、そうでないものは簡単に切り捨てる。つまり、一ノ瀬について話すことを渋っているということは、三島にとって"一ノ瀬の弱み"は切り捨てることの出来ないものであるということ。
三島の興味の矛先、知りたいもの。それは――。
人の死に関することである。
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