通り雨

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通り雨

僕はただ待っていた。 「好きな子同士でグループになって音読をしましょう!」 あぁ、またか。 先生がこう言った場合僕は必ず教室の隅で一人グループを作ることになっている。 「あら?伍くん1人?誰か~伍くんとグループになってくれる子はいるかな?」 1人?って毎回おんなじセリフを口にする先生に飽き飽きする。 クラスメイト達がクスクスと笑う声が聞こえて、そして 「はーい!オレらのグループあいてまーす!」 クラスのリーダー格の男子が勢いよく手を挙げる。 これも決まっていること。 「あら!佑介くんありがとう。よろしくね」 ありがとうって... 先生は何にも分かっちゃいない。 彼らにとってこれはゲームだ。 僕を晒し者にするためのゲーム。 彼らはニヤニヤと笑みを浮かべる。 あぁ気持ち悪い。 分かっていても足がすくむ。 怖い。苦しい。怖い。 今日は何をされるのだろう?1人グループでも良いよって言ってくれたら今日の僕は救われるのに。 足が思うように動かない。 あっ!こける...! もちろん転んだところで心配してくる人なんてのは誰もいない。 この教室には誰も。 「どんくさっ」 近くにいた女子が呟いたのを聞いて、足を引っかけられたのかと気がつくまでに随分と時間がかかった。 僕は苦笑いをして起き上がると、蔑んだ顔をしたリーダーが目に入る。 そして僕は苦笑いのままふらふらと歩きだす。 クラス替えのある4月まであと2ヶ月。 ここまで耐えてきたんだ。大丈夫。あと少し。 クラスさえ替われば何も怯えることはない。 でも、もし来年もこいつが同じクラスだったら? その時は...ー 大丈夫だ。うちの学年は5クラスもある。 大丈夫。今はただ信じて待つしかない。 僕は待っている。通り雨が止むのを。 この日々はただの通り雨だと信じて。
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