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月灯りの下少年と少女は手を繋ぐ。優しいぬくもりに包まれながら、少年はまた唄をうたう。ーーあまりにもそれは心地よくて、夢のようで、でも現実で。
少年の唄に耳を傾けながら少女はーー。
「のう朱音、わらわは朱音の唄が気に入った。だからーーこれからも聞きたい」
「唄好きなのか?」
「さあ。でも、朱音の唄は好きじゃ」
それは心からの言葉だった。唄などあの頃は、本当に興味なかったのだ。よく美しい唄があちらこちらから聞こえてきたのに、どれも心には届かなかった。
今宵、少年は少女のためだけに唄を紡ぐ。蒼夜色に揺らめく草と白い花の海の中で。
これが蒼黒の果ての出会いだった。
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