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彷徨う果てに
唄が、聞こえる。
優しくて、哀しい唄が。
「誰じゃろう、とても綺麗な唄じゃ」
月灯りが照らす渡り廊下、少女は途中で、足を止めた。心にまで、月灯りが差し込むような――この歌には、そんな不思議なあたたかさがあった。もう寝床につこうと思っていたのだが、そんな気はすっかり失せてしまった。
小柄な少女は、菫色の羽織りを着てから小さな宮の外に出る。夜は肌寒く滅多に出たりはしないのだが、今夜は特別だ。気分もいい。
唄に誘われるように、唄が聞こえてくる方に一歩一歩進む。
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