2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
月灯りの下 凍てついた時の檻
聞こえてくるのは風の調べと孤独の心音
舞い散る花びらにあの花の面影をみるけれど
時の砂ように零れ落ちてゆく
蒼黒の地彷徨い紡ぐ死神
過去に囚われた憐れな死神――――
白く可憐な花が咲き乱れる世界で、白の法衣を纏った誰かが、唄をうたっていた。
どこまでも澄んでいて、どこまでも真っ直ぐな想いを孕んだ、唄を。
あの頃は唄など興味もなく、唄に心を動かされる事も決して、ない。淡々と儚く零れ落ちてゆく、雨雫のようだった。
どれほど美しい響きでも、何の意味も為さなかった。
少女は暫し、その光景を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!