彷徨う果てに

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 白い花が散る。音もなく降る。静謐で、時が凍ってしまったような、永遠と刹那が創り出したような幻想の時間。  その時一陣の風が、法衣のフードの中身をさらけ出す。少年は特に驚いた風もない。それは、唄以外に関心がないようにも見えた。  深い闇を映しだしたような漆黒の髪に、ルビーの瞳。綺麗な顔立ちをした少年だった。 刹那、少女と少年は見つめ合い、そしてあずさが花のように笑う。 「綺麗な色じゃ。夜色の髪も、そのあかい瞳も――とても綺麗じゃ」 それは心から出た、真の言葉だった。 少年は何も言わなかった。ただ、その言葉を黙って聞いていた。 心に沁み込ませるように、じっと。
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