彷徨う果てに

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少年の瞳が微かに揺れる。 それは戸惑いだった。 村人は自分を見ると、不吉だ、呪われていると言って、誰も近寄っては来なかった。 この場所にも偶然たどり着いただけだ。あまりにも幻想的で美しいから、この場所で、唄をうたいたくなっただけ。 唄は好きだ。 唯一自分が持っている大切なもので、捨てられないもの。 少女が少年に手を伸ばす。 「行くところがないならおいで。ここは何もないところだけれど、それでもよければ――おいで朱音」 初めて伸ばされた手ーーこの手を受け取ってもいいのか迷いながらも、少年は蒼黒の果てでこの優しい手を取った。
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