Q

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泣きぬれてしまった。みすてられた犬のように泣いていた。 わかっていたこと。はっきりと理解したくなかったことをわざわざ暴いて、 勝手に傷ついてしまった。独り相撲なら横綱級の無駄な強さを発揮した。 冬の雑踏。背骨を直接握り締めてくるような寒さだ。 ないてるぜ、あの女。 とおりすがりの誰かが気づく。まあいたしかたない。私は号泣しているのだ。 Qの自由奔放さは私に平和をついに与えてくれなかった。 都会の喧騒。クリスマスソング、イルミネーション。 そわそわしたようなうわついた空気を悪くさせている私。 鼻水が冷たい、冷たすぎる。ようやく少しわれに返ることができた。 バッグからハンカチをだして鼻をぬぐった。 「どうしたの?ここは寒いからどっかであったまらない」 どうやったらマスカラやらツケマ、ファンデぼろぼろの女をナンパしようと発想できるのか。にらみつけた。 正面にたつ無能男はようやく状況を把握した。 「あ、すいません。顔やばいことになってるから、その、えっと」 といって立ち去った。日本語はなせ、たわけが。毒づく。 スマホに着信。Qだ。まじか。 「はい新宿警察です」 Qはのんきに爆笑した。まあそうだろう。私の絶望さえQには通じない、そういう男だ。 「この電話は品質向上のため録音されていますが、カツどんはたべますか」 「あいちゃん、きれっきれすぎるwww」 語尾にwwwが絶対ついている。かっとなった。 「きれてるよ、Qに」 クリスマス前にQの二股が発覚した。詰問したら半笑いで反駁された。 心はもう浮気相手にあるが体のスペックは私のほうが上だから、できれば体だけでも つきあいは継続したい、と面と向かって大真面目に宣言されてしまった。 スペックって。 直後は感情が通り越してしまって、超うけんだけどって笑いながら部屋を出た。 1秒も一緒にいたくなかった。 「Qさあ、うちさ、さっきのあれ?あの、セフレはがち無理なんで、ちょっと」 「っていうか考えたんだけどやり直さない?あいつおっぱいが小さいからさ、あいちゃんがいいよ。俺一途じゃね?どう?」 「久司まじうけんだけど」 「本名なしのなしで。ライムスターに漢字はなしだよ」 はあ? 「あいちゃんとハキョクしたくないよ白紙にしてよ」 天を仰ぎ目をつぶる。 「うるせえ白痴が!しにさらせ!白々しいんだよ!」 通話を一方的に切った。
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