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『でも私ね、白が好きなの。色んな色が深く混ざりあって他の色を引き立たせる色になってる。青空の中にある雲もそう。絵を包む紙の白もそう。そこにあるだけで他の色が映える優しい素敵な色だもの』 「ってね」 …彼女が気づいた白の綺麗さの理由はそれだったんだ。なんで僕には教えてくれなかったんだろうか?娘には教えているのに…。 すると娘はニヤニヤとこちらを見ながらこう続けた。 「お母さんったらそのあとすっごく恥ずかしそうな顔でこう言ったのよ」 『私はそれを彼に教えてもらったの。それまでの私は自分の中にある色に形を付けて絵にすることが出来てたんだけど、彼と結婚して、あなたが産まれて…家族のことを考える時間がどんどん増えて行って、自分の色をどんどん忘れていったの。それで一時期何も書けなくなっちゃった時期があってね。そんなとき彼はずっとそばにいて支えてくれた。私を暗い場所から連れ出してくれた。私の色を引き出してくれたの。彼は私にとっての’’白’’なのよ。』 「って!すごい惚気だよねぇ。」 「そっか…」 世界が廻る、白に包まれて生まれた命と命が交わり、白を纏って終わっていく。 君という命と出会えた僕も白に消えていくのだろう。 だから行先は同じはずだから。もう少しだけ待っててね。 空を見上げた。どこまでも広がっていく入道雲。その白の中で君が笑ったような気がした。
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