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「知ってる?白って一番汚れた色なんだって」 「へぇ、なんで?」 「白色って色んな色が混じったりしてるから実は汚いんだって。」 「ふーん。青空の中にある入道雲の白はとってもきれいに見えるのにね。」 「うん。私もそう思う。汚いのにきれいって不思議だねぇ」 そんな会話を思い出す。彼女は画家だった。 幼い時から絵を描くのが好きで、休みの日には部屋にこもってずっと絵を描いていた。 僕が休みの日に遊びに行っても絵の話ばかり。たまに「教えてあげる」なんて得意ぶって一緒に絵を描かされたりもした。 あの会話をしたのも「こんなにいい天気なのに部屋にこもるのはもったいない」と彼女を外に連れ出したら、ちゃっかり鉛筆とスケッチブックを持ってきてて、入道雲のスケッチをしてた時だったっけ。 学校ではおとなしいのに、絵のことになると人が変わったように饒舌になり、とっても楽しそうに絵のことを話す。 そんな彼女が好きだった。 大人になり、僕らは結婚した。 結婚式の時、純白のドレスに身を包んだ彼女の美しさは思わず感嘆の声が漏れてしまうほどだった。 彼女も僕のタキシード姿を「似合ってるね」と褒めてくれた。 その年の冬に子供が産まれた。
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