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仕事を途中で抜け、雪の中、病院までの道を急いだ。
”白い”タオルに包まれた娘と疲れ切った様子ながら幸せそうに笑う彼女の姿を見たときは胸がギュッとなり、思わず涙を流してしまった。
娘が小学校の時、絵に興味を持った。
彼女は心底嬉しそうにこの色の効果はどうだの色の相関がどうだのと教え始めた。
微笑ましい光景だった。
パレットには日ごとに様々な色の絵の具が塗られていた。
子供が大きくなり家を出てから、彼女はスランプに陥ってしまった。
あれだけ好きだった絵が描けなくなった。
筆を上げては下ろしを繰り返し、涙を流しながら紙を破く。そんな彼女を「いつか君がまた絵を描けるようになるまで僕が君を支えるよ」と抱きしめた。
破かれて床に散らかった紙と絵の具が乱雑に塗りたくられたままのキャンバスが僕らを見つめていた。
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