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それから少しして、彼女はスランプから立ち直った。 きっかけは僕が「せっかくこんなにいい天気なのに、家にいるのはもったいない」と彼女を散歩に連れて行った時に見た入道雲だったそうだ。 その日の晩に彼女は「私、なんで白がきれいに見えるのかわかっちゃった。」と言ってきた。 「へぇ、なんで?」と聞いても彼女は「秘密~」とだけ返して教えてくれなかった。 後日、彼女のキャンバスにはあの日見た青空ときれいな入道雲の風景が描かれていた。 時が過ぎ、髪が全て白髪になった頃。 彼女は亡くなった。 ”真っ白”な死に装束に身を包んだ彼女の顔はとても安らかだった。 僕は涙を流しながら、おはようの来ない最期の「おやすみ」を言った。 そして今、僕は病院の白い天井を見ている。 どうやら僕ももう長くはないらしい。 病室の窓から見える青空はきれいだけれど、どこか空虚じみて見えた。
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