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「お父さん体調はどう?」
娘が見舞いにやってきた。娘は高校を出た後、美術の専門学校へ進学し、彼女と同じ画家の道を歩んでいた。
「うん、今日はだいぶ調子が良いよ。」
「本当?じゃぁこんなにいい天気なのに、部屋にこもりっきりなのはもったいないね!散歩に行こうよ!」
僕は不思議な既視感を感じつつも「いいよ」とその誘いを快諾した。
「見て!でっかい入道雲!」
「本当だ。とてもきれいだね」
病室の窓からでは見えなかった入道雲を見上げた。
あぁ本当にきれいだ。どこまでも大きく膨れ上がる白とそれを包むどこまでも広がる青…。
何度彼女とこの景色を見ただろうか。今はもういない彼女と。
そうだ、娘に教えてやろう。あの白の真実を。
昔、彼女が自慢げに教えてきた白という色の本質を。
「なぁ知ってるかい?白って一番汚い色なんだってさ」
「知ってるよ、いろんな色が混ざってるからだよね?専門学校を卒業した頃にお母さんが教えてくれたよ。」
そうか、彼女がもう教えていたのか…。なんだかその様子が目に浮かぶようだ。
「自慢げだったろう?」
「うん。とっても」
僕に教えてきた時のように楽しそうに、饒舌になっていたんだろうな。きっと。
「そのあとにお母さんはこうも言ってたよ。」
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