蜘蛛の糸

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お相手の女子は納豆が好きで足が早くて、スッゴいかわいい田口さん。 あんまり話したことないけど、田口さんがおやつに納豆を食べてるって聞いてから納豆を見るたびに田口さんを思い出してる。 いや、松石が告白するのは別にいいと思う。運動会の後だし、「団結、団結」って煩いくらい連呼してたから「なんか俺たちって最高の仲間」って空気がエグいし。 でも、砂場で松石を囲んで、他の連中が円陣を組んで祈るってのはあり得ないんだよ。 私達がパンケーキなら松石は真ん中に置かれたバターみたいだね。メルヘン女子が言った。 「田口さんを想う恋心で、溶けちゃいそう。」 へぇー。松石がバターなのはいいけど、私達ってパンケーキなのかな? むしろドーナツみたいなんだけど。 てかだから、何の儀式なんだよこれ。 「マジ‥あり得ない」 心の言葉が飛び出しちゃったんだわ。 だって意味わかんないだろ。 誰だよ「祈ってパワー送ろうぜっ!」って言った奴は。 なんで皆で目つぶって、膝まずいてんの。 この時間はなに? けれど、この一言はこの場の空気に合っていなかったことは間違いない。 運動会後の高揚感。 暗くなった公園。 空には星が輝くロマンチックな夜。 私は一瞬でこの置かれた最大のピンチの状況を把握すると同時に、揚げ足とって私を沈めようとするイケメンの斎藤の鋭い目線を感じていた。 次、次の一言。 命取りなんだ。 「いや‥だからほんと、あり得ないくらい私達って団結してるよね。今こうして膝付いて、なんか思い出しちゃったもん。皆で大縄跳び何十回も練習してさ、こけて膝すりむいたりして。そんで本番は今までで一番跳べたよね。この団結力、松石の力になったらほんと素敵だと想う。」 ビックリするくらい、冷静でありながら感情の入った声がでた。 誰も声を出さない。 間違えた?白々しかった? 膝まずいてるのが砂場のせいで、蟻地獄にでも沈んでいく感じがする。 蟻地獄は斎藤。 その時、蛛の糸が垂れてきた。
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