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昼頃から降り出した雨は全く止む気配を見せず、益々激しさを増している。 神崎【かんざき】勇【いさむ】は教室の窓から外を見て、他人事のように考えた。 (そういえば、傘持って来てないな) 彼は17歳にしては大人びた表情で、また黒板に目を戻す。 今年は受験生だから本当はぼんやりしている暇など無いのだが、今日は何故か雨音が耳に入って来る。 そしてそれは時折、胸の奥で大きく響く。 遠い日の記憶と重なるような、ずっと奥に仕舞ってあるものに触れられるような気がする。 不意に大きく響いたチャイムの音に、勇は我に返った。 今日の授業はこれで終わりだった。 帰り支度を始める生徒達のざわめきに、勇は一つ息をつく。 今日はバイトが休みだが、これからまだ面倒な事が待っている筈だ。 勇はもう一度溜息をつき、机の横に掛けていた鞄を取り上げた。 雨は、止む気配を見せない。
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