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自分が住むアパートに着いて、勇は顔を上げた。 もう既に全身びしょ濡れになっている。 水を跳ね上げながら階段を上り、自分の部屋の前に来た所で立ち止まる。 ドアの前の廊下に、一人の少女が倒れていたからだ。 側に少女の物と思われる小さな鞄が一つ転がっている。 「おい、大丈夫か?」 しばらくの間、あまりの事に呆然としていた勇は我に返って声を掛けた。 少女の体を揺すってみて、自分と同じか或いはそれ以上濡れているのに気付く。 よく見ればコンクリートの床にも水溜まりが出来ていた。 「どうするんだよ、おい……」 途方に暮れて呟いた勇の声を掻き消すように、雨の音が大きくなった。
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