3人が本棚に入れています
本棚に追加
自分が住むアパートに着いて、勇は顔を上げた。
もう既に全身びしょ濡れになっている。
水を跳ね上げながら階段を上り、自分の部屋の前に来た所で立ち止まる。
ドアの前の廊下に、一人の少女が倒れていたからだ。
側に少女の物と思われる小さな鞄が一つ転がっている。
「おい、大丈夫か?」
しばらくの間、あまりの事に呆然としていた勇は我に返って声を掛けた。
少女の体を揺すってみて、自分と同じか或いはそれ以上濡れているのに気付く。
よく見ればコンクリートの床にも水溜まりが出来ていた。
「どうするんだよ、おい……」
途方に暮れて呟いた勇の声を掻き消すように、雨の音が大きくなった。
最初のコメントを投稿しよう!