黒き遊び

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「おおー。ひかりちゃん、今日も気合い入りまくってるねー」 「…………」 勇は弁当箱の蓋を手に持ったまま、左手で頭を支えた。 ある程度覚悟はしていたものの、今日もまた凄まじいメルヘン弁当だ。 「愛に満ち満ちてるねー、輝いてるよ」 自分の弁当箱の蓋を開けながら、関心したように隼が言う。 愛かどうかは知らないが、この弁当を作るのに相当の手間が掛けられているのは勇も認める所だ。 一体ひかりは、今朝何時に起きたのだろう。 勇が少し離れた場所で優衣と弁当を食べているひかりを見ると、至って元気そうである。 授業中にも眠っている様子は無かったし、全く恐るべき体力だ。 すると視線に気付いたのか、ひかりがふとこちらを見た。 勇と目が合い、にっこり微笑む。 どうしたら良いのか分からずに適当に視線を外すと、隼がにこやかに尋ねて来た。 「仲良いんだね。まさに以心伝心、目で語らってるんだね?」 「変な事を言うんじゃない!」 そう怒鳴ってから、いつしかこんな生活に慣れてしまっている自分に気付く。 全く腹立たしい事実だ。 平和な分には、面倒事に巻き込まれるよりましだが。 朝に感じた寒気と嫌な予感を思い出すと、このまま平和には過ごせないような気もする。 勇は箸を取り上げながら、深く溜息をついた。
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