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その途端、頭にぱさりと何かが掛けられた。
手に取ってみると、まだ湿っている布巾だった。
「誰が、裏社会の女ボスなの?」
洗った布巾が入った籠を持ったまま、ひかりが笑顔で近付いて来る。
「ただ適切な比喩をしただけだろう」
言い返しながら布巾を手渡すと、隼がひかりに尋ねた。
「洗濯、有り難う。僕達も手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。これを干せば、終わりだから」
ひかりはにこやかに続ける。
「私、お洗濯は得意だから。ね、勇?」
「俺に訊くなよ」
「だって、いつも家では私がやってるし」
その会話を聞いて、隼も意味有りげに微笑む。
「そういえば、二人は一緒に住んでるんだよね。どんな感じ?勇との生活って」
「どんな感じって……」
「隼、下らない事を訊くな」
慌てて勇が割り込んだが、ひかりが眩しい程に瞳を輝かせて答えた。
「とっても楽しい。勇は?」
「…………」
「おお、勇が照れてるよ。さすがひかりちゃんパワー」
「こら、余計な事を言うな。大体まだ仕事中だろ」
今はまだでも、いつか。
こんな風に真っ直ぐに、何かを伝えられる時が来るだろうか。
勇は仕事に戻りながら、ふと空を見上げた。
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