黒き遊び

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勇はひかりの頭に救急箱を乗せてその動きを抑えながら、改めて宴に向き直る。 「それで、あんたはどうして本気を出さなかったんだ?」 宴が本気で勇を殺そうとはしていなかった事は分かっている。 そうでなければ、とっくに殺られている。 宴はしばらく無言で勇を見返してから微笑んだ。 「……面白い方達ですね」 それだけを言って立ち上がる。 「ご迷惑をお掛けしました。それでは私はこれで」 「待った。まだ答えを聞いてないぞ」 玄関に向かおうとした宴を呼び止める。 長身の姿がゆっくりと振り返り、勇を見てからひかりに視線を注ぐ。 「貴方達がそれを知るのはまだ早い。答えはまたいずれという事で」 その声は感情を読ませず、表情も裏を見せない微笑。 それは、これ以上の追求を許さない。 読めない静けさを残して宴が外へ出て行くと、勇はやれやれと息をついた。 「全く、また厄介なのが出て来たな」 「またいずれって言ってたね。また来るのかな」 「……冗談だろ」 あんなに面倒な相手には、出来るならもう関わりたくはない。 切実に、勇は思った。
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