いまきみの望む証を

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雨。 それは閉ざされた記憶に、時々強く語り掛けて来るようで。 「おい、どうした?」 勇に話し掛けられて、ひかりははっとした。 学校の二時限目の授業。 窓の外は、朝から降り続いている雨。 「お前、次当たるぞ」 「あ、うん。有り難う」 黒板の内容を確認し始めたひかりの横顔を見ながら、勇も雨音に耳を澄ました。 ひかりがぼんやりするのは珍しい。 この雨のせいだろうか。 そういえば、ひかりと初めて会ったのはこんな雨の日だった。 勇は先程から教科書の陰で読んでいた本に視線を戻す。 雨音の合間から、微かに聞こえて来る何かに耳を澄まして。 それは閉ざした扉の向こうにある、まだ朧で曖昧なもの。 隣の席で、ひかりが教師の質問に答えている。 窓の外は雨。 空に掛かるのは厚い雲。
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