3人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
次の授業は移動教室だった。
勇は隼と共に教科書を小脇に抱えて階段を下り、保健室の前を通り掛かった。
「……何だ?この人だかりは」
保健室の前には、生徒達による黒山の人だかりが出来ていた。
見る限り皆元気そうだから、休養をしにという訳では無いだろう。
「ああ、そういえば何か今日から新しい保健室の先生が来たんだったね」
隼が自分も興味深げに生徒達の間から保健室を覗きながら言った。
そういえば、朝に担任がそんな事を言っていた気がする。
「それにしたって、これは異常じゃないか?」
これではまるでアイドルだ。
「よっぽど綺麗な人か、よっぽど格好良い人なんじゃない?」
それで此処に集まるとは。
短い休み時間に、わざわざご苦労な事だ。
「あ、勇。何してるの?」
後ろから声を掛けられて振り返ると、ひかりと優衣が教科書を抱えて立っていた。
「凄い人ね」
「うん。ちょっと通りにくいよね」
優衣の言葉に隼が答えた時、集まっていた生徒達がどよめいた。
人混みを割って、保健室から背の高い人物が出て来る。
最初のコメントを投稿しよう!